2024/08/20
(株)バギーポート(福井大器社長)のメンズPB「BAGGY PORT」が、昨年度(7月決算)の売り上げ2ケタ増と好調だ。またユニセックス~レディス向けの「BAGGY’S ANNEX」と「Seagull Ship」も、メンズ系販路がユニセックスのMDを組み始めており、好調だった一昨年の売り上げを維持している。
好調商品の傾向を福井社長に聞くと─、
「見た目には古き良きバギーポートと変わりはありませんが、内装の方は時流に合わせ進化し、素材や収納といった機能の部分で今の仕様を取り入れたものが動いています。また、30年続いているロウ引きや、20年続いている備長炭染めといった帆布の定番シリーズも相変わらず好調で、取引先によって仕様や素材を変更することはありますが、全体にメンズカバンは息が長いと感じます」とのこと。
ただ息が長い分、昨今の急激な値上げのインパクトが強く、展示会でも20~30年前の発売当初の約2倍の価格になってしまうロングセラー定番にはさすがに厳しい予想をしていたが、それでも取引先からの反応は以前と変わらず、定番の強さを再認識したという。
ネット通販でのレビューなどを見ていても、「同じカバンを3回目の購入」というものや、30年前に買ったカバンが今も売られていることへの高い評価など、リピーターの声をたくさん見る。長年のユーザーにとっては裏切らないカバンだからだが、新規のユーザーにとっても他にない唯一無二の魅力がある。
例えば25年前から展開する白化合皮のビジカジは、手提げでA3が入る型が今でも売れ続けている。最初はデザイナーの図面入れなどに使われていたが、最近お寺の住職が「袈裟を入れるのにちょうど良いから」と買っていったという。
時代とともにカバンのスタイルや使い方はだいぶ変化してきたが、そんな中で定番として続けてこられたのは、色々な使い方ができるけどニッチな需要を取り込める“唯一無二”のカバンだからなのだろう。
帆布や合皮以外にも、革ものでの定番化にも力を入れている。革離れが進む中で、革にこだわらないZ世代が10年後にターゲット層になった時に、革の良さを知ってもらうための提案として、クードゥーレザーなどストーリーのある革ものを育てている。クードゥーレザーは最初は小物だけの展開だったが、好調なため営業企画の担当が取引先との会話の中からバッグにも拡大した。今後はこうした新たな世代に向けた定番作りにも取り組んでいく。
バギーのものづくりを継承しながら
次世代に向けた提案を強化
唯一無二のものづくりを継承し、現在「BAGGY PORT」の営業企画を担当するのは升悠(ますゆう)氏。大学卒業後、セレクトショップにて販売業に携わり、バッグや財布などの雑貨を扱っているうちに川上の仕事に興味が出てきて、同社に就職した。
バギーポートのカバンは大学生の時によく専門店で見て知っていて、その時はまだ価格的にも手が届かず、「いつか持ちたい」ブランドだったが、今は作る側になり、どう「持ちたいと思わせるか」を考える毎日である。
「BAGGY PORT」の作りを受け継いでいく上で、升氏が考えているのは、創業時からのものづくりのスタイルやそれに関わる人の繋がりを継承しながら、それをそのまま続けていくだけではなく、自分のスタイルをどう確立するかということ。
「継承しながら型にはまらず、ということを意識しています。あくまでもバギーポートの匂いというものをベースにし、時代は変わりますから、新しいことをどこまで取り入れられるのか。自分としてはそういうゾーンをバギーポートの中で確立していきたい」(升氏)。
新しい表現に挑戦したものがシェルターダックの新シリーズとして登場した。シェルターダックは最近力を入れているアルバートンの素材で、昔からアメリカで流通していたテントの生地を使った、いかにもバギーらしい商品だ。
内装の作りはタブレットやパソコンなどが収納できるよう、今の仕様にこだわり、前ポケットや5㎝幅の綾織テープがデザインポイント。「間口が広く、丈夫でシンプル」というコンセプトは基本にしながら、進化したバギーポートを見ることができる。
またこのシェルターダックシリーズは日本製だが、升氏は今後新しい定番を作っていく上で、生産拠点が重要なポイントになると考えている。バギーポートというと国産のイメージが強いが、財布に関しては海外製がメインで、最近ではカバンでも海外製が増えている。
「国産の良さは周知のとおりだが、より大事なのは海外製でも日本品質の視点で作っているかどうかです。そこをしっかり抑えていれば気配りのある作りができるので、むしろ積極的に海外で作るメリットがあります」。
実際に長く取り引きのある海外の工場もレベルはかなり高く、「こういう作りができるともっと幅が広がるのに」という場面ではしっかり応えてくれる。
「もちろん国産はより強化しながら、海外でもしっかりしたものづくりができれば、いいものを高いコストパフォーマンスで世に出せるので、お客様の満足に繋がります。もちろんそういうルートを作ってきてくれた諸先輩方のおかげで色々な挑戦ができているんですが、これからはものづくりの技とか考え方、そして次にどの素材がくるのか、といった嗅覚は磨いていかないといけないなと思っています。幸い社内では、各ブランドの担当者に囲まれていますので、常に今どんな構想を持っているか、情報を共有できる環境にあります。そういう強みを利用させていただきながら、長く続いていける商品を世に出していきたいです」。