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端材が主役。逆転の発想で商品開発するアップサイクルプロジェクト/堺市×waji

time 2023/05/31

端材が主役。逆転の発想で商品開発するアップサイクルプロジェクト/堺市×waji

 高級ブランドの多くは、品質保持のために材料の選定に厳しい基準を設けている。その結果、皮革で言えば表面にキズや擦れ、血筋などが目立つ革は使用されずに破棄されるか、キズ物の在庫として積み上がっていく。環境問題やSDGsがクローズアップされる昨今、この使われない革を主材料として捉え、材料を中心にデザインを考えるという逆の発想でアプローチを試みる「堺市 × waji」による企画が本格的に活動を開始した。

 プロのものづくり集団として美容師向けのシザーケースや、鞄・革小物の製造を手掛ける(株)waji(本社大阪府堺市・菅野裕樹社長)では、地元の堺市が“SDGs未来都市”※として作る「堺市SDGs未来都市計画(2021~2023)」の策定を受け、令和3年5月に開設された「さかいSDGs推進プラットフォーム」に参加。これは、市民や企業、団体などがSDGsに関する情報を共有し、連携や交流を通じてSDGsの取組みを推進するために開設されたプラットフォームで、共通のテーマであるSDGs達成に向けて自由にアイデアを出し合い、誰一人取り残さない持続可能な社会を実現するために、堺市のSDGsの担い手となる人たちをつなぐ場となっている。
 同社では「さかいSDGs推進プラットフォーム」にて、「役目を終えたモノ」を「欲するモノ」に変えることを目指し、捨てられていた部分が無駄なく活用され、次世代に繋がる持続可能な循環を実現する「jidai project(ジダイ プロジェクト)」を提案。これは、製品の製造過程などで発生する端材(革、糸、生地など)や、本来の役目を果たし廃棄されるものを主素材に、新たなデザインやアイデアで付加価値を付け、製品にするアップサイクルプロジェクトだ。これまでに「jidai project」でアップサイクルされた作品は、去る3月25~31日に堺市役所庁舎本館1階エントランスに展示され、「廃材の可能性に気付かされた」「オシャレだった」など好評価を得ている。
 さらに、5月16~18日に浅草橋gallely tで開催された業界バイヤーに向けた新作展示会では、公式テニスボール開発の際に生じた試作素材をメインに、バッグ製造時に生じた皮革の端材を付属使いとしたトートバッグとクラッチポーチを発表した。素材の持つ個性的なハリと質感を活かし、waji定番のアシンメトリーの型に落とし込んでいる。トートバッグは、見た目だけではなく、口元の曲線が 肩にかけた時に体にフィットするように持った時の状態まで計算しつくされた秀逸なデザインがポイントになっている。
 現在、このようなアップサイクル製品は、環境に配慮した持続可能なファッションの一環として注目されている。また、より多くの企業や消費者がこの問題に共感し、資源の有効活用と環境保護に貢献することが期待されている。革の未来は、使われなかった部分によってより輝くものに変わるかもしれない。

左から菅野社長、堺市東京事務所長・羽田さん、職員・松本さん。
クラッチポーチ/¥3,960、トートバッグ/¥9,900

※「SDGs未来都市」とは、地方創生とSDGsの両方に貢献することができる画期的な制度。SDGsの目標に沿って、地域の課題を解決し、将来にわたり成長力を確保するまちづくりに取り組む都市を、内閣府が選定および認定している。

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