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皮革・革製品のサステナビリティを発信。川北芳弘座長に訊く~これまでの活動とこれからの展望~/Thinking Leather Action(TLA)

time 2024/01/05

皮革・革製品のサステナビリティを発信。川北芳弘座長に訊く~これまでの活動とこれからの展望~/Thinking Leather Action(TLA)

川北芳弘 座長

誤解によるマイナスイメージを
皮革業界から是正していく

 世の中で“エコロジー”や“サステナブル”という言葉が広まり始めた2020年頃、その時流に乗って様々な素材が出現してきました。それらの意識や概念がプラスに働いた素材もありましたが、残念ながら皮革に関してはマイナスなイメージを持たれるきっかけとなってしまった。“革製品のために動物を殺している”、“革を使わなければ畜産のCO2が減る”、“皮革は環境負荷が大きい”、“代替素材の方が皮革よりサステナブルだ”といった誤解による論調が様々なメディアで発信されるようになってきたことへの危機感から、皮革業界が皮革・革製品の正しい知識と情報を発信するため、2021年にこの事業をスタートしました。
 そもそも、革は食肉の副産物として発生する皮を活用して作られたもの。私たちがお肉を食べ続ける限り、出続ける皮を無駄なく活用し、革製品の素材として作られています。革製品を使うのをやめても食肉の副産物である皮は出続けますので、アニマルウェルフェア(動物福祉)やアニマルライツ(動物の権利)に直結することはありません。また、例えば食肉の副産物として出る牛の皮は、日本では年間約100万頭分で、それを活用しない場合、ハンドバッグで769万個分、革靴で2500万足分の皮を無駄に廃棄・焼却することになり、相当なCO2が排出されることとなります。他にも、革製品のために森林を切り開き、動物を育てているということもないので、革製品を使うことが森林破壊に繋がることもありません。
 当時から、この様に皮革に関する正しい情報やデータを知らないまま、皮革を作らないこと、革製品を使わないことが、環境や持続可能な社会にとってメリットがあるかのような風潮が形成されていたのです。

対象者に適した啓発活動で
より効果的に正しい情報を発信

TLA事業の設立時、業界内でも皮革に対する知識にばらつきがありました。対外的な情報発信も大切ですが、業界が一丸となって同じ知識を共有し、同じ情報を発信できる体制を整えることが第一、と感じたのです。そのためのマニュアルを作成し、業界内の全員が同じことを発信できるよう、小難し過ぎないようにしながらも簡単過ぎず、一般の人が見ても分かりやすいレベルの内容にしました。2022年度に、鞄、バッグ、靴など主な革製品の関連団体を通じて全国各地で勉強会を開催し、TLA事業およびマニュアルの説明も行ってきました。この様なインナーブランディングからの口伝えによる地道な啓発活動は非常に大事で、今後も継続していくつもりです。
 2023年からは、業界関連企業の取引先となる百貨店・大手小売店や、家具メーカー、シューケア会社、メディア等に向けた勉強会・講習会を開催し、徐々に活動範囲を広げています。新聞媒体への意見広告掲載では、様々な業界で影響力のある大手企業経営者やアナリスト、コンサルタントをはじめ世間一般に向け、誤解を正すべき情報を届けました。
 また、10月末にはTLAの公式サイトも開設しました。革が食肉の副産物であることや、クロム・排水に関する正しい知識など、様々な情報がご覧いただけます。サイト内では、皮革・革製品がサステナブルである理由を説明する3分の短いユーチューブ動画が観れるなど、オンラインを通じて若い世代の方々にも正しい情報発信をしています。
 簡潔にまとめた消費者向けリーフレットも作成し、メーカー、卸、小売などを通じ、広く配布しております。

情報戦を勝ち抜き
誇りを持って働ける環境を作る

 最近、業界企業の中でも、TLA事業の啓発活動としてではなく、顧客に対する自社の営業活動で“正しい革の知識・情報”を訴えていただいているケースが増えてきました。“Thinking Leather Action”はあくまでもきっかけで、その意識が業界全体に浸透し、それぞれが自然な形で“正しい革の知識・情報”を発信して広まっていくことが、TLA活動の最終的な目的と考えています。
 インターネットで『革、サステナブル』というワードで検索をかけると、以前はネガティブな内容の記事が多かったのですが、今では“Thinking Leather Action”関連の記事が上位に出てきますので、“正しい革の知識・情報”がより多くの目に触れることになっています。そこから派生して、インターネット上での革への間違った情報や意見に対して、正しい情報を知った人達が「革って実は…」とコメントを返しているのも見受けられるようになりました。この様に世論の動きが見え始め、世間一般への浸透具合も少しずつではありますが実感しています。
 TLAの活動は、言わば“情報戦”。どんな素材にも良い所と悪い所があります。その良い所をきちんと発信していかなければ、様々な論調の中で勝手に悪いイメージを付けられたり、歪曲した解釈で誤った認識を持たれてしまいます。革の正しい情報を発信すること、素材の良い所をアピールすることは、決して皮革以外の素材を否定したり、攻撃するということではありません。それぞれの素材にも優れた所は勿論ありますので。
 今後もこの情報戦を勝ち抜いていかなければなりません。TLAの活動で、業界内外での「正しい革の知識・情報」をアップデートし、広く世間での皮革素材のイメージ向上を図り、皮革業界関連企業の方々、皮革製品を販売されている方々が、自分たちの仕事に誇りを持って働ける環境を作っていければと思っています。
 2024年度は、消費者向けキャンペーンも検討しています。

【Thinking Leather Action 公式サイト】https://tla.jlia.or.jp


Thinking Leather Action (TLA)について

 エコロジーやサステナブル、SDGsといった言葉を多く耳にし、一般的に浸透してきた昨今、一般社団法人日本皮革産業連合会(藤原 仁会長)では、正確な情報を皮革業界全体で統一発信するため、皮革や革製品のサステナビリティを発信していく「Thinking Leather Action」(TLA)事業を2021年に発足。


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